浮き輪とかめがねとか下駄とか
当院では、診療の中でもカウンセリングの中でも対話を大切にしています。
そのような診療方針ではありますが、やはり薬を使ったほうがいいと判断した時は例えを使ってお話をします。
患者様の中にも薬は使いたくない、やめたいという気持ちが強い方がいらっしゃいますが、そんなときに
よく使うのが「浮き輪、めがね、げた」の例えです。
浮き輪:自力だけで泳ごうとしないで(薬を)浮き輪にして楽に泳ぎきってくださいね
めがね:見えづらいときにめがねをかけるように(薬を)ツールとして活用してくださいね
下駄:(薬に)下駄はかせてもらって、背伸びで切り抜けましょう
基本的に人には自己治癒力があるので、大抵は生活や体を整えながら時間をかけて回復していくことが可能なのですが、辛い時期を圧縮して抜け出せるように、この世にあるものをなんでも上手に活用してください、という意味合いです。
こういった例えで腑に落ちて治療を受け入れる患者様が多いのですが、先日、いつもの例えが通用しない患者様が来られました。
久しぶりに来られたので、訳をたずねると「薬をやめようとしてすごく努力したのにできなかった」と気落ちされています。
いつもの「浮き輪、めがね、げた」の例えで、薬を無理にやめることを目標にしないようにお話したのですが
「私は十分背が高いし、目もいいし、大学の時は遠泳部だったんですよ」
と返されてしまいました。
なんというツワモノ!!と半ば感心しつつ、
その日はもう一度治療目標を見直してゴールは「落ち着いて自分らしく過ごせること」と再確認しました。
東京はなクリニックでは必要以上の薬を出すことはありませんが、患者様には体調を整えにツールとして活用していただきたいと思っています。